ブランディングディレクター吉田益美の HIBI BRANDING

WHATS BRANDING

LOGICAL BRANDING

実は、未解決。ブランドって何だろう。

WHATS BRANDINGのイメージ画像

「2度と手にしたくないブランドたち」
「憧れているだけのブランド」

上記は、僕がブランドに関する講義の際に、実際に受講者から
聞かされた言葉です。あり得ないことだと思われるかもしれませんが、
現在、世の中に広まっている、いわゆるブランドの定義(ネット検索か
代表的なブランド本をご参照ください)では、消費者が抱く、
このような2つの思いに対する十分な説明さえ不可能なのです。
それなのに、ブランドという単語を使ったキーワードときたら
ブランドローヤルティ、ブランドエクイティ、ブランドアイデンティティ、
ブランドエクスペリエンスなどと発展・分化した研究がすすみ、
専門家でさえ「もう、ワケわからん!」状態になっているのが実情です。

いくつかの理由は考えられますが、僕は、

①ブランド研究者の多くが、成功したブランドを対象に
研究をすすめる傾向があり、「理想に近づいてるブランドから、
ブランドの定義を導き出す」ケースが多いため

②ブランドが持つ2様態、つまりブランドとは
実体(商品、サービス、企業等)であるとともに
情報(商品、サービス、企業等に対する知識)でもある、
という事実に対する基本的な認識が欠如しているため

③ ②こそが、人間にとってブランドは何のために存在するのか?
という本質的な問いへの入口なのに、それを軽視してきたため
「ブランドとは何か?」という重要テーマへと続く道標を
見失っているのではないかと推察しています。

 

ダメなブランドがあるから、ブランディングがある。

でも、そこがブランディング・ディレクターとしての
僕には納得できないところ。ダメなブランドがあるからこそ、
ブランドを管理し、育成していくブランディングという仕事が
あるのではないか、と思うのです。
つまり、実務家の立場から見れば、ダメなブランドもブランドの一つ。
大嫌いなブランドもブランドの一つ。
一生、憧れているだけのブランドもブランドの一つなのです。

 

ブランドは情報であり、実体である。

そこで、このWHAT’S BRANDINGでは
オリジナルの、ブランドの定義を公表しておきます。

【カテゴリー認知システムに基づくブランドの定義】

Ⅰ.ブランドとは,何らかの学習1)や,任意の価値基準によって選ばれ,単純化2)されて
脳内のカテゴリー・プール3)の中に記憶され,現在も再生,再認が可能な状態で保持されている個別の製品・サービス・企業に関する情報であるとともに,記憶されたことのある実体である。
Ⅱ.最終選択されたブランドとは, Ⅰ.のプロセスの後に,実際に再生,再認された個別の製品・サービス・企業群の中から再選択され,購買(交換)された,実体としての製品・サービス・企業及びその情報のことである。
Ⅲ.ブランドとは,常態においては情報として意識下に潜在し,ニーズや外部刺激(広告・製品接触等を含む)に応じて再生,再認される個別の製品・サービス・企業に関する情報であるとともに, 記憶されたことのある実体である。

1)この定義において学習とは,経験や条件刺激等(報酬や罰をもたらす)によって行動パターンの持続的な変容をもたらす習得的な行動のこと。2)この定義における単純化とは,体制化等の一般的な符号化(物理・知覚的類似性,意味・概念的類似性による群化)を含む概念である。3)ブランド情報を保持・格納する,カテゴリー認知に,当該カテゴリーと他のカテゴリーと区分するフレームとしての意味だけでなく,一定の情報受容量を持つ容器として意味を付加するために案出した概念。

少しBIG MOUTHかもしれませんが、いずれ
世界のブランドの定義は、必ずここに帰着するはず。

▶︎より学術的な論拠に関心をお持ちの方は
「ブランドを再定義する〜ブランドはなぜ忘れられ、思い出されるのか〜」
https://www.j-mac.or.jp/wp/dtl.php?wp_id=109

 

ブランディングって何だろう?

上記のブランドの定義に基づいて
ブランディングとは何かを考えれば、答えは簡単。
個別の商品(サービス・企業等)を記憶されるべく
さまざまなCreative workをはじめ
マーケティング戦略(商品開発プロセスを含む)等を
駆使して育成していく活動がブランディングなのです。
もちろん、優良資産化を目指す活動ですから、
知識(情報)は優越性を備えていて、
なるべくたくさんの人に共有(記憶)される必要があります。

つまり、ブランディングとは、生理的にあまり情報を
受容したがらない「さぼりたがりやさんの、脳」と人間の
記憶をめぐる駆け引きであり、闘いでもあるのです。
下記に、このブログ- Hibi Brandingにおける
ブランディングの定義を紹介します。

【ブランディングの定義】

ブランディングとは,個別の製品(サービス・企業)やブランドを,
各ステークホルダーが享受する便益の最大化のために,
優越的で持続的な共有情報および実体として育成していく活動である。

人間にとってブランドとは何か?

そしていよいよ、ブランドの核心です。
これは、上述のブランドの定義③や、脳科学における
認知的経済性(知識を得る際に、できるだけ少ない認知的負担で
多くの知識や情報処理的な成果を得ようとする
人間が本来的が持っている性質)からも説明できるのですが、
ブランドとは、決して固定的なものではなく時々の要請に応じて
次のような3つのプロセスを経て、
人間社会の役に立っているのです。

①ブランドは憶えられることで、役割を果たす
②ブランドは忘れられることで、役割を果たす
③ブランドは思い出されることで、役割を果たす

考えてみれば当たり前のことなのです。
もしあなたが今、3,000m級の山登りに挑戦しているとします。
登頂部の険悪な岩場を、一歩ずつ慎重に
ルートを探しながら、ピークを目指しているとします。
こんな時に、ブランドのことなんか考えていられませんよね、
滑落しちゃうから。あるいは、青信号が点滅し始めた
横断歩道を渡り切ろうとしているとします。
そんな時も、ブランドのことなんか
思い出していられませんよね、轢かれちゃうから。
つまり、ブランドとは、人間が必要な情報やモノに出会った時に
とりあえず記憶して、忘れ、必要な時点で取り出して
使うための情報(モノ*)なのです。ふだんは忘れられているのです。
しかし、これまでの大半のブランド論が語ってきたものは①のための手段
(名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、パッケージ等)について
であり、それを受け手側から見たものとしての
(知識、認知システム、価値観)であった
に過ぎません。そして、決定的に不足していたのは、

①〜③のような時間軸に沿った全体観なのです。
下記にブランドの正体についてまとめます。
素直な目で読み、ご自身の経験に照らして想像してみてください。
きっとホントの、ブランドの姿が見えてくるはずです。

*旅人がある旅の途中で、とても美味しいリンゴが実る木を発見して、その木の位置やリンゴの美味しさを
記憶していれば情報、ポケットに1個のリンゴを忍ばせていればモノです

 

【人間にとってブランドとは何か】

ブランドは、記憶されることで、忘れられる。忘れられることで、
人の脳に余地が生まれ、日々の暮らしが営まれ、
人間は新しい発見をし、世界理解を広げる。そして時々の
刺激や要請に応じてブランドは思いだされ、購入・交換され、
生活の一部となり、また記憶されるべく、忘れられていく。